改めて同じテーマでエントリー(5/18)

入笠山の山小屋、マナスル山荘本館の山口です。

今週末の23日(土)は、経ヶ岳バーティカルリミット(トレランの大会)に、お客様と参加のため、ランチの営業をお休みさせていただきます。朝焼いたパンと、おみやげ品の販売、お茶と漬物の無料ご休憩はご利用いただけます。週末登山予定のお客様、誠に申し訳ありません。日曜日はランチを通常通り営業いたします。

先週エントリーした「SNSでの登山情報について思うこと」は4000を超えるページビューとなり、大きな反響をがありました。色々なコメントを頂きましたが、拙い文章のため、思うように内容が伝わらなかったのではと反省しています。私の読者に、もう少しきちんとお伝えしようと思い、懲りずに同じテーマのエントリーです。

【SNSの登山情報について危惧すること】

ネット上では、登山の記録やコメントが日々更新され、いろいろな情報が簡単に手に入るようになりました。しかし、情報を誤って理解したと思われる登山者が増えているのも事実です。

【例えば】

「アイゼンは必要ありませんでした」というような装備の情報、「迷うところはありません」というようなルートの情報、「風もなく、寒くありません」といった天候の情報などです。

その情報を受け入れるためには、そのときの状況を理解しなければいけません。アイゼンが必要なかったのは通過した時間帯のせいなのか、天候のせいなのか、傾斜やルートのせいなのか。迷うところがないのはルートにトレースがあったからなのか、本当に迷うことがないくらい整備されているのか。風もなく寒くないのは、その時の気圧配置のせいなのか、地形的に風なない場所なのか。

【どうすればいいか?】

SNSでアップされる情報は、その時の状況がたまたまと理解するべきです。人間は都合の良い情報ばかり集めたがります。その時の状況がたまたまよいことが重なったから、問題なく登れた。たまたまその時の状況が悪いことばかり重なって遭難した。その像な事例を、過去にもたくさん見てきました。

一例として、この冬入笠山で出会った登山者。彼は、アイゼンとワカンとスノーシューをすべて用意して登ってきました。山荘前で装着したのはアイゼン。その彼に「アイゼンは必要ない、今はスノーシューが最適」とお話しましたが、「アイゼンがいい」と書き込まれたネット情報を鵜呑みにして、その時一番不適なアイゼンを選んだのです。アイゼンでも登ることはできます、しかし新雪の積もった雪の状況では、アイゼンは適切ではありません。アイゼンは凍った雪面を歩くための用具ですから、入笠山ではシーズン通して必要のない用具です。訓練や練習では装着するのなら話は別ですが。

【登山の経験値をアップする】

ネットの登山情報をすべて否定するわけではありません。が、よりレベルアップしていくための登山知識や技術の習得には、自分の経験値を上げていくことが必要だと考えます。

ルートは地図に穴が開くくらい何度も何度も読み込む、入門者や初級者もコースタイムの書いた登山地図でシミュレーションすることによって、その山の状況をつかむことができるようになります。このコースは距離が短いのになんでコースタイムは長いのか?ということを自分なりに仮設を立てて、実際の登山で検証します。自分の仮説が間違ったら撤退。その積み重ねが経験値を増やします。地図読み講習や勉強はその後でも構いません。今、活躍しているガイドたちだって、地図読みをマスターしてから登山を始めたわけではありませんから。

装備や天気もネット情報を鵜呑みにせず、自分で考えて失敗しながら経験値を上げる。単にいるいらないではなくて、自分の登山に必要なものが見えてきます。装備の軽量化はそれぞれの装備品を軽くすることではなく、経験値を上げることで必要のないものを削ぎ落とすことです。極論ですが、雨がふらないと完璧に予想できるのなら雨具は持って行かなくてもいい。真っ暗闇でも目が利くのなら、ライトは要りません。

前述のアイゼンとワカンとスノーシューを持ってきた方は、その意味の無さを経験値として身につけてくれたのならいいのですが。

先日、今年の夏に剱岳に登る予定の方に、鎖場で待たなくてはいけない時にハーネスでセルフビレイを取ると待ち時間も安心ですよ。とお話しましたが、その方はネットで「ハーネスは必要ない」と書いてあったけど、「持って行くと安心」の状況がわかりましたと言っていました。

【装備の選択】

登山だけでなく、他のスポーツでもこの問題は大きいです。マラソンやランニングのSNSコミュニティーで「軽くて走りやすい」と書かれたシューズ情報に、そのランナーのレベルやペースに関係なく「私も履いてみます」的なコメントが多く書かれています。これは、書き込んだランナーもシューズ選択の知識がない上に、読み手も情報を鵜呑みにしている状況。書き込みを読んで、このシューズを選択したランナーの多くが故障を発症しているでしょう。なぜそう言い切れるかというと、私はランニングシューズを販売するショップを経営し、この問題に取り組んでいたからよくわかるのです。

用具の選択基準やお手入れの方法もネットでアップされる情報に間違いは多いし、山荘で登山者同士でかわされる会話にも間違いはとても多いです。山荘をご利用のお客様の会話には進んで入り込み、正しい情報をお伝えします。わからないことはぜひ山荘をご利用して身につけていただければと思います。入笠山を訪れる方にはすすんでお教えします、利用者特権です。

【ガイド登山のすすめ】

登山講習全盛ですが、私のイチオシはガイドについて山を歩くことです。机上講習よりも、ガイドについて歩くことのほうが、山に対する知識や技術に加えて山の接し方を学ぶことができるからです。これはガイドの資質にもよりますが、ガイドの山での行動を身近で見ることによって、そのガイドの山に対する姿勢を理解するからです。ネットで覚えた情報ではとても太刀打ちできません。

私が山岳救助に関わるようになった時に、山を教えていただいた山岳ガイドは山を歩く時に、登山道の枝を折りながら歩いていました。黒部の谷で職猟者として生計を立てていたそのガイドは、登山道のまだ整備されていない時代の北アルプスで、帰り道を間違えない登山の知恵として歩いたルートの枝を折るということをしていたのでした。今では、そんな方法は許されません。が、鉈目と言って未踏のルートの目印に立ち木に鉈で傷をつけるということは一般的に行われていまいした。

そのガイドから教わったのは、道迷いを防ぐために山を登りながら度々後ろを振り向くこと。後ろの景色を脳にインプットすることで、引き返した時やルートを見失った時に有効です。そのガイドの枝折りは、当時「なんでこんなことをするんだろう?」と否定的に考えてしましたが、その後にガイドの山の姿勢を直に知ることにより、その当時身につけた道に迷わない技術だったのだと理解することができました。

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今の時代、登山記録や情報、知識がSNSから得られることは悪いことではありません。私も情報を得ています。ただ、うのみにすることはありません。その情報を咀嚼して、自分の経験に当てはめて、計画や装備を選択します。ただ、間違った情報も多いので、取捨選択もします。

今の時代に重要なのは「情報」の選択と咀嚼、登山だけではない重要なポイントではないでしょうか。

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改めて同じテーマでエントリー(5/18)”へ1件のコメント

  1. さわいり より:

    たしかにSNSからの情報の選択と咀嚼については重要なポイントだと思います。山口さんがおっしゃる通り人間は都合の良い情報を集めたがります。
     山荘のこのプログの中の情報も同じことだと思います。「入笠山はアイゼンは必要ない!」と言い切る部分や、立ち入り禁止区域へのスノーシューの侵入を批判しておきながら、山小屋の企画するツアーで禁止区域へ侵入する行為。(場所を記さなくてもプログの写真からどこで撮ったものか分かります)
    中途半端な情報提供は誤解が生むことを忘れないで下さい。
    あとで痛い目を逢うのは悲しいことです・・・。

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