「山岳遭難」カテゴリーアーカイブ

鋸岳に登ってきました(9/7)

入笠山の山小屋、マナスル山荘本館の山口です。

この週末は山荘を休館にして、マナスル登山隊・番外編に出かけました。目的の山は南アルプス・鋸岳。そう、甲斐駒ケ岳から北に延びる稜線上の岩峰。入笠山から甲斐駒ケ岳に続く尾根上のピークでもあります。一般路ではないので、公募でのマナスル登山隊ではなく、長いことお願いされていた常連さんからのご要望で実現しました。

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北沢峠から甲斐駒ケ岳へのルート途中でビクセンの社長さん御一行とばったり。

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午後3時の甲斐駒ケ岳山頂はひっそりしていました。山頂よりロープで確保しながら今夜の宿泊地・六合石室へ向かいます。

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六合石室はすでに床いっぱいに寝袋が並んでいたので、テントを設営。

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翌朝、まだ雨は降っていません。核心部を越えるまで降らないことを祈りつつ出発。

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第二高点への登りから核心部に突入です。

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ここから雨が降り出しました。

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第二高点山頂

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第二高点で出会った女性二人組に、大ギャップのガラ場に人が倒れていて、救助の連絡をしたことを聞きました。

鹿窓に向かうべく下降を始め、ガラ場が見渡せる場所に出てみると人が倒れています。近寄り、声をかけても返事は無し。ちょうどヘリの飛行音も聞こえてきたので、同行者を草付きの立木にロープで確保をとり、遭難者回収の手伝いをしてきました。

鋸岳で46歳男性死亡 滑落か

ニュースでは登山道の下になっていますが、倒れていた場所は第二高点から中央稜を下降し、鹿窓にに向かう大ギャップ下部のガラ場の上部。なので、このルートを通過中に滑落したという報道は間違い。推測ですが、中央稜の下降途中に誤って踏みあとに入り込んで転落したのではないかと思います。ヘルメットを着用していましたが、転落には無力でした。転倒や小さな落石には有効なヘルメット、着用の前提として、転ばない、躓かない、落ちない歩行が命を落とさない絶対条件。シートベルトをしていても、事故を起こさない運転が絶対条件なのと同じです。

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ショッキングな状況に遭遇した同行者は、動揺もあり鹿窓の通過にはちょっと手こずりました。

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第一高点はガスの中。幸いにもここまでの間、本降りにはならずに通過することができました。

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角兵衛沢を下降するころには本降りの雨。飽き飽きするような長い下りでした。

2日目の行動時間はほぼ12時間。途中での思いがけないできごともあり、戸台河原の駐車場に着いたのは暗くなるころ。何はともあれ全員無事に下山できて本当に良かった。

登山計画書について思っていること(2/2)

入笠山の山小屋、マナスル山荘本館の山口です。

今夜も月夜です。カメラを持って入笠湿原に出かけました。

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必ず晴れて星空が見られると保証はできませんが、月明かり以外に何も人工の明かりがない世界を体験することができます。

 月影スノーシューハイク(ガイドツアー)

雪山が月明かりで輝く幻想的な景色を見られるのは今週末までと3月初旬。ご予約はお早めにどうぞ。

今日みつけたニュース↓

信濃毎日新聞(信毎web)「あすへのとびら 登山届けを考える 管理の発想は避けたい」

以前のブログで、山の遭難について書きました。

最近の山の遭難について(1/22)

その中で、「登山届は遭難に何も関係ない」と書きましたが、私の考えは信濃毎日新聞の記事と同じです。

登山届はどうして書くのでしょうか?いえ、書かないといけないのでしょうか?それは、登山をする人が、自分の行おうとする登山を精査するためです。コース、時間、装備、食料、天候、緊急時、・・・等をシミュレーションしながら計画している登山を机上でチェックしていきます。ありとあらゆる場面を想定して、登山計画を練っていきます。計画書は、自分にとって大事なものなものなのです。ですから、山の勉強には登山計画書をつくるということが必須です。もちろん実際の登山中には計画のミスや予想しなかったトラブルが起きます。それを教訓にその精度を高めていくことが登山技術を高めていくということです。その結果、登山時間の短縮、装備の軽量化、天候判断の正確性などが生まれてくるのです。

今回の登山届の義務化は、単なる手続きになってしまう恐れがあり、手続きを済ませればOKという間違った思考に結びついてしまうのではないでしょうか。ヘルメットを装備していれば、技術がなくても登山していいと勘違することにも似ています。

山岳遭難が発生した時に、警察が個人を特定するためには有効なのでしょうが、これにより山岳遭難が減るとは思えません。

登山届の義務化には首を傾げますが、登山者は登山計画書を必ず作ってください。提出先に自分の家族や勤め先も入れましょう。自分の登山を事前に精査し、行程や装備、アクシデントの対応をしっかりシミュレーションしてください。高価で高性能の装備があなたを救うわけではありません。

登山計画を綿密に練るからこそ、登山に冒険性が生まれるのです。そこが登山の本当の楽しみではないのですか?

最近の山の遭難について(1/22)

入笠山の山小屋、マナスル山荘本館の山口です。

最近ニュースで聞かない日がない、バックカントリーの遭難についてちょっと意見を言わせてください。

昨日、山荘前の斜面をスキーで滑ってきました。スキー場のコース外であり、バックカントリースキーです。

http://youtu.be/QqhU_ycGSMM

地図もコンパスも食料もヘッドランプも持っていません。スコップもビーコンもプローブも持っていません。

正月に新潟県湯沢町の神楽ケ峰でバックカントリーでボードで滑って遭難した3名がニュースになりました。雪の中でビバーグ出来る装備や技術を持って救助されたにも関わらず批判の嵐です。

湯沢で救助された3人も請求 スキー場コース外遭難の代償

私はなぜ批判されないのでしょう?

この遭難を皮切りに相次いだスキー場からのバックカントリー遭難、批判の大部分が「コース外滑降」に向けられているようです。そもそもコース外滑降とは、スキー場の管理エリア外であり、自己責任において立ち入りは自由です(私有地で立ち入りを規制している場所もあります)。まず、コース外(管理エリア外)と管理エリア内の立ち入り禁止区域の違いを認識しましょう。

スキー場のリフトやゴンドラを使っていますが、コース外に進入するバックカントリー滑降では、自然の猛威に対するリスクにも自己責任で回避や脱出する技術や知識が必要です。なければ安易に入るべきではありません。でも、そのリスクに対して、結果的に遭難という事態になったとしても、セルフレスキューの努力をし、生きながらえて救助された案件については安易な批判をするべきではないと思います。

毎日報道されるバックカントリーの遭難のニュースの中には、安易にパウダーを滑りたいという無知なボーダーやスキーヤーもいます。いや、何も考えていないけど、たまたま無事に滑り降りられたということが毎日起きているのかもしれません。

私が昨日の滑走で批判されなかったのは、何事も無く山荘に戻れたからです。なぜ何も持って行かなかったかというと、何も必要ないと状況判断したからです。何も持っていなくても無事に下山すれば、何も批判されません。

詳細を調べたわけではありませんが、いまバックカントリーに入る人々の意識は批判する人たちの考え以上に高いと思います。知識、技術、装備、気象、雪の状態などかなり高いレベルで勉強しているようです。私が十数年前に山スキーのガイドをしていた時よりも、スキルは相当上でしょう。

山の遭難はひとつのミスで起こるわけではありません。登山届を提出していないことを批判する書き込みも多いですが、登山届は遭難には何も関係ありません。複合的な要因がいくつも重なって遭難という事態に陥ります。その原因を批判ではなく、ひとつひとつ解きながら次への教訓としていくことです。そのような報道がないのは本当に残念です。登山届未提出だけで記事を書くジャーナリストはもっと勉強して下さい。遭難や山の事故で痛い目にあうのは当事者です。次はいかに回避するかの検証無くしては事故は減りません。

山で遭難しないため身につけるスキルはとても多岐にわたり、全てをマスターすることはなかなか容易ではありません。なので、「引き返す」「登らない」「止める」という選択肢がそのスキルをカバーすることになります。また、雪山で営業する山荘を利用することもスキルのカバーの選択肢です。冬の入笠山で、マナスル山荘本を利用して、冬山のスキルアップをしましょう。

近頃のニュースを見ていると、バックカントリーがひとつの批判キーワードになっているようです。SNS全盛で、山のミスも言い訳できてしまう時代です。的確に事故や遭難の本質を見極め、自分に当てはめ検証してください。批判からは何も生まれません、と自分にも言い聞かせましょう。