勇気ある撤退?(9/7)

入笠山の山小屋、マナスル山荘本館の山口です。

今日は朝から風雨が強く、山は荒れています。

実は今日から3日間、西穂高岳から奥穂高岳へ縦走に出かける予定でした。しかし天候によるリスクの高さから中止を昨日朝に決定しました。

最近、というより前から気になっている

『勇気ある撤退』という言葉。

この言葉にとても違和感を感じています。

例えばこんな場面で使われるのですが、SNS投稿などでは…

『雨が強くなったので頂上は断念して下山します』

『体力が限界、ここから進むのをあきらめて下山します』

という投稿に

『勇気ある撤退ですね』

などと使われることが多いと思います。

しかし…

勇気ある撤退なんて無い!絶対にありません。

登山とは、行動中その状況を常に考えながら判断をする高度なスポーツです。

天候、体力、装備、技術、知識・・・いろいろな要素をその状況に当てはめて瞬時の判断を求められます。これから起こるであろうリスクの大きさを常に考えながら進退を判断します。

計画していた行動を中止してコースを変更する、下山するという行動は、複合的な状況判断より下されたリスク回避であり、必然的な状況判断です。『勇気ある撤退』ではありません。

登山でのSNS投稿を見ていると、自分の体力不足、装備不足、天候判断の誤り、知識不足、技術不足、経験値の低さによる下山が『勇気ある撤退』という言葉で美化されているように思えてなりません。自分のレベルよりはるか上のランクの山にトライしてしまうときにもよく見かける気がします。

先日、マナスル登山隊で歩いた裏銀座の縦走。

2日目烏帽子岳〜三俣山荘への道中は止むことのない強風、大雨での歩行でした。あえて中止しなかったのは…

  • 私が以前山岳パトロールで歩いていてルートに精通していた
  • メンバーの装備、体力ともに十分に把握していた
  • この状況での縦走は参加者のスキルアップにつながる
  • ルート後半に源流を経由することで風雨にさらされるリスクの軽減を期待できる

という状況判断で、それなりに悪い状況ながらも予定通りの行動を指示しました。

明日からの西穂〜奥穂は

  • 台風21号の雨で登山道の状況悪化が考えられる
  • 前線が停滞し太平洋高気圧および南海上の低気圧からの湿った南風の流入
  • 上空の気圧の谷の接近

から、強い雨風の3000mの岩稜になるだろうとの判断で中止しました。

この二つの事例は『勇気ある前進』や『勇気ある撤退』ではありません。

いろいろな状況判断により決定された論理的に導かれた答えに沿っての行動判断です。

登山は一歩間違えれば命を落としてしまう行為ですが、そこに踏み出す一歩も必要です。そのためには身につけなければいけないいろいろな登山スキルがあります。前進するにしても撤退するにしてもそれを判断するに至ったリスク判断はどのようなものか?低山でも高山でも常に考えながら行動をしてほしいと思います。登山の経験値アップやスキルアップも貪欲に取り組んでください。安易に『勇気』に走らずに。

野口五郎岳での記念撮影

 

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